「神世界」騒動に見る反オカルト・疑似科学活動の道筋

   2015/01/27

よく考えろよ
「神世界」騒動が動いた。警察庁は23日、神奈川県警の警備課長を解任された吉田澄雄警視が関与したとされる有限会社「神世界」グループの霊感商法事件について、処分することを決定した。吉田警視については、「地方公務員法違反にあたる行為を重ねていた」として懲戒免職処分とし、吉田警視がグループにかかわり始めた2005年以降の歴代本部長3人の監督責任を問う。

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県警は一連の行為が営利企業に従事することを制限し、信用を失墜させる行為などを禁じている地方公務員法違反に当たり、歴代本部長の処分も免れないと判断したという。

「霊感商法」事件は今までにもあったが、こうした事件が起こると、そのたびにオカルト批判を行う主に理科系の人々は、「オカルト・疑似科学に騙されないよう科学・理科教育が大切」と力説する。

たとえば、反オカルトの急先鋒のような扱いでテレビ出演している大槻義彦氏などは、昨今の生徒・児童の理科系学力低下傾向と結んで、「理科・科学教育の過程では、戦後民主主義も教育の機会均等も無視します。いま必要なのは理系エリートだからです」などと、とにかく理科教育さえやれば問題は解決するといわんばかりの露骨な理科系偏重すら披瀝している。
http://ohtsuki-yoshihiko.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/13_530b.html

反科学や疑似科学の類に対し、真実を知るための科学知識獲得は必要なことである。しかし、それだけでこの問題は解決するのだろうか。むしろ、大槻義彦氏の意見は、文系と理系の協働によって真実を解き明かしていくことを妨げる学問的ヘゲモニーでしかないように思われるがどうだろう。

オウム問題を追及する江川紹子氏は、講演で「どんな人がカルトにハマりやすいか」という問題について触れている。

それによると、「学歴」「家庭環境」「宗教や不思議なものの好き嫌い」などは、いずれも原因として無関係ではないものの、決め手となるわけではない。むしろそうした点で、カルトから遠いと思われる人でもハマることはあり、そこにこそカルトの複雑さがあるとしている。(2001年4月13日の「JapanSkeptics記念講演・シンポジウム」より)

つまり、いくら高度な科学知識を身につけても、騙される時は騙されるということである。

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なるほど、逮捕されたオウム真理教の幹部には、理科系の高学歴者がゾロゾロいた。

オカルトに騙されないためには科学・理科知識を身につければいい、という論理が一面的なものでしかないことはこうした事実が証明している。

吉田澄雄警視にしても、とくに神秘主義・非合理主義への傾倒が深かったわけではないだろう。要するに、杉本社長が「イイ女」(「日刊ゲンダイ」12月26日付)だったから、理屈としてはいけないことと知りつつも、立場を省みず職権を利用して入れあげてしまったのである。

そんなメロメロの警視の前に、「神世界など科学的根拠がない」などと「科学知識」を突きつけたとしても、何の解決にもならなかっただろう。

人は何故、オカルト・疑似科学に騙されるのか。信じたいものを信じるからだ。それは、価値意識で判断するということである。科学知識の豊かな人間でもそれは同じだ。

そして、価値意識には、吉田警視がそうだったように、矛盾や動揺を抱える”弱さ”がある。

つまり、人間というのは、本来間違いうる存在なのである。

さすれば、個々の科学知識啓蒙だけでは問題解決には自ずと限界があるだろう。そうした矛盾を抱えた人間がおりなす社会の中で、それによる間違いや不利益を避けるにはどうしたらいいかを考えなければならない。

それは法の整備かもしれないし、公務員のあり方の再検討かもしれないし、マスメディア監視かも知れないし、学校教育のあり方かもしれない。おそらくそのすべてが大なり小なり関係してくるだろう。

それを解決するには、自然科学だけでなく、心理学や社会科学、さらには文学とも医療ともジャーナリズムとも宗教とも手を携えて、そこに接近しなければならない。

物事が科学知識の啓蒙だけで済めば簡単だ。「科学的認識」の側からのアプローチだけではなく、その何倍もやっかいな「価値意識」の側からの接近を、学術的だけでなく、日常的思考すらも視野に入れた取り組みを行うことが求められるのではないだろうか。

健康情報・本当の話

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  • 作者: 草野 直樹
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