体罰問題で補足

   2015/01/27

体罰問題は単純ではない
体罰問題で補足したいことがある。このブログの一部の記事を「ツカサネット新聞」に投稿し、「YAHOO!JAPANニュース」にも掲載された。それによって閲覧者が増え、様々な意見をいただいたので、もう少し詳しく書こうという気持ちになった。具体的には、やはり、「きっこの日記」と「ジャニーズ」という人気キーワードが2つあるものは参照数が伸びている。

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それ以外にも「葦の髄から天井を覗く物理学者」と「「神世界」騒動に見る反オカルト・疑似科学活動の道筋」については、多くの人に読んでいただけたようだ。

「神世界」騒動に見る反オカルト・疑似科学活動の道筋

ところで、「葦の髄から天井を覗く物理学者」で触れた、体罰と暴力について、もう少し書こう。

トレーニング上の「しごき」や「いじめ」といった「暴力」は、何も大槻義彦氏が言うような相撲やプロレスだけのものではない。

そして、大槻義彦氏は「暴力」の一言で混同しているが、力道山の刺殺と体罰の話は全く別の問題である。

これ、小学生にもわかるよね。

今回はそのうちの体罰について一言しておく。

明治大学で自殺者が出た応援団や、バレーボールの全裸練習事件、戸塚ヨットスクールや進学塾のようなスパルタ式のいわゆる私教育、さらに学校教育(公教育)など、様々なところで体罰=暴力は問題になっている。

しかし、それとスポーツ一般は全く関係のない話である。

(特定の)スポーツを目の敵にし、暴力の責をそこに求める大槻義彦氏の記事は合理性がないだけでなく、読む者にそうした体罰の現状と本質を見失わせる憾みがある。

さらに、国民の中の、スポーツをする者とそうでない者に無限の対立を招く有害な雑文と言わざるを得ない(大槻義彦氏は本当に教育者だったのだろうか)。

なぜ、体罰が横行するのだろう。それは、日本の教育・スポーツ界には根強い体罰肯定ーしかも体罰否定論を激しく否定するーの体質があるからだ。

だが、それは決して宿命的に存在していたわけではないようだ。

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『紙の爆弾』(2008年2月号)では、角田裕育氏がこう指摘している。

江戸時代以前の武士道には「体罰」などという概念はなく、明治維新後に欧米の教育を持ち込んだ際に「導入」されたものである。

だが、今や欧米も脱体罰の流れにある時に、日本だけが体罰肯定にしがみついていると。

これは、必ずしも武士道が現代の文化や価値観よりも全面的に優れているという意味ではないだろう。

封建社会における武士道では、しがらみや葛藤を論理的に昇華したり、自由な言論で疑問や批判を語って社会に反映したりすることはあり得ない。

欧米の教育を持ち込んだ際に「導入」されたということは、おそらく富国強兵や国力増強の進軍ラッパとして使われてきたことが窺える。

体罰とは、いわば資本主義と民主主義の生成期に発生した「残りカス」であるが、現在もそれが温存され再生産されてのさばっている、と筆者はとらえている。

だから「体罰肯定」の日本は、民主主義は導入されたが、同時にそれは残念ながら熟していない段階ともいえるのではないか。

現在の文部科学大臣・渡海紀三郎や、副大臣の松浪健四郎は、大相撲時津風部屋事件の報告を受けながら、教育・スポーツ現場における体罰問題解決の具体的な提言をしない。

そもそも、議場で水をばらまくような男を副大臣に任命するような現在の政府だ。体罰に対する見解は、おおよそ見当がつくだろう。

いずれにしても、体罰を肯定する考え方は、競技者の原罪でもなく、前回書いたようにスポーツそのものに還元すべきものでもない。社会的に作られ刷り込まれてきた(反動)思想である。

大切なことは、それがいかなる狙いで持ち込まれたのか、そして、その思想がどのような人々によってこんにちまでどう再生産されてきたのか、つまり社会的要因を見ることである。少なくとも、暴力を憎しみ体罰体質を憂うのなら、そこに言及するのは当然の道筋だろう。

真の問題解決に向かわせないという意味で、池内了氏の言葉を借りれば、大槻義彦氏の記事は「社会のなかの疑似科学」である。私たちは、大槻義彦氏の疑似科学記事などに騙されずに、社会の非合理を事実に基づき、ありのままに原因を見ていく合理的精神を失わないようにしたいものだ。

そのためには、大槻義彦氏の理想とするような「専門バカ」ではだめだろう。

「(オカルト・疑似科学に対峙するためには)文系人間と理系人間の交流というだけでなく、その人個人の中に文系的要素と理系的要素が必要」(2001年4月13日の「JapanSkeptics記念講演・シンポジウム」で安斎育郎氏)ということではないだろうか。

それがスケプティクスとしての立場であると私は考える。

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