【食材】「○○はがんに効く」といわれているけど?

   2015/01/28

食材
食材のスケプティクスな話である。「フードファディズム」という言葉をご存知だろうか? 食品に含まれる栄養素や、特定の食材が健康と病気に与える影響を過大に信じることである。健康情報をうたうテレビ番組で、「○○を食べると健康にいい」「△△を食べると××になる」といった食材や食品の取り上げ方をするために、こうした考え方が国民・消費者の中に流行してしまったようだが、医学、保健学、栄養学などにかかわるまともな専門家は、むしろそうした考え方を戒めている。

人類の長い歴史を経て淘汰されずに私たちの食卓にのぼる食材や食品は、どれが必要でどれが不必要ということはない。

いろいろなものを食べることで、食材同士がそれらを補完したり相殺したり相乗したりして、バランス良く栄養を摂ることができるからだ。

たとえば、小豆はポリフェノールや食物繊維を多く含むが、ビタミンAやビタミンCがほとんどないといわれる。

逆に、ビタミンはあるけれどもカロリーがない野菜もある。そこで、野菜サラダを食べる時は、小豆を加えることで栄養のバランスがとれるというわけだ。

ところが、特定の栄養素や食材の「いいところ」と「わるいところ」だけを取り沙汰すことで、ともすれば、「いいところ」だけを食べたり、「わるいところ」のある食材・食品を徹底的に回避したりする食生活の偏りがうまれ、そのバランスがくずれる可能性がある。

最近では、肉など動物性食品を食べるな、という「健康情報」が幅を利かせている。

しかし、そのおおもとにある根拠は、肉の摂取量が日本人よりもずっと多いアメリカで発表された「マクガバンレポート」であり、日本人の平均的肉摂取量をもとにした報告ではない。

日本人に対して、どのくらいの動物性食品の摂取で健康被害が多発するかという疫学調査はない。

もとより食材の、アミノ酸スコア(体内で合成できない必須アミノ酸が含まれる比率)は、肉や魚や卵といった動物性食品が、大豆などの植物性食品を上回る。また、戦後の日本人の平均寿命が驚異的に延びたのは、動物性食品が食卓や給食に使われるようになった戦後世代の食生活によるという説もある。要するに、動物性食品も食べ過ぎてはいけないというだけで、他の食品とのバランスが大切なのである。

また、特定の食べ物が「がんに効く」「がんになる」という説も怪しい。

食材の特定の成分に、「発がん性」や「抗がん作用」が発見されることはままある。

しかし、ひとつの食材の中に発がん作用とその何倍もの抗がん作用が同居していることが多く、その一方で、「抗がん作用」がイコール「がんに効く」とならない点にも注意が必要である。

最も良い例が野菜である。野菜には、体内で亜硝酸イオンに変化するとされる硝酸イオンが含まれている。

亜硝酸は、肉や魚に必ず含まれている二級アミンというアミノ酸分解過程でできる化合物と結びつくこと、発がん物質のニトロソアミンを生成する。

硝酸イオンのどれぐらいが亜硝酸イオンに変化するかはまだわかっていないが、ハムやソーセージの発色剤などよりも格段にその数値が高いことは確かだ。

反面、野菜にはビタミンやミネラル、食物繊維など、摂取にメリットがあることは今さら論ずるまでもない。野菜は摂るべきなのだ。

ただし、一部でいわれる「野菜(の食物繊維)が大腸がんに効く」という説は、現在医学的にはそれを否定する報告もある。

私たちが健康を維持するには、食べ物だけではなく、運動や生活サイクル、ストレスなどさまざまな視点から見て行くことが必要である。

特定の食品や食材に期待を抱くことは、その多くが「自然由来」の「成分抽出」である健康食品(サプリメント)への依存や過剰な期待につながり、それはいきおい、悪徳業者に騙されたり、通常の治療を受ける機会をみすみす失ったりすることになりかねない。

フードファディズムについては、『健康情報・本当の話』(楽工社)に詳しい。

健康情報・本当の話

健康情報・本当の話

  • 作者: 草野 直樹
  • 出版社/メーカー: 楽工社
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 単行本

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