オリコンの名誉毀損訴訟と大槻義彦氏の江原啓之氏糾弾

   2015/01/28

訴訟
オリコンの名誉毀損訴訟と、大槻義彦氏の江原啓之氏糾弾という2つの出来事がほぼ同時期に起きたが、著者はこの2件を結んで今回書いてみよう。2008年4月22日、東京地裁(綿引穣裁判長)は、烏賀陽氏弘道氏が雑誌『サイゾー』に寄せたコメントで名誉を傷つけられたとして、ランキング会社のオリコンが烏賀陽弘道氏に5000万円の損害賠償を求めていた裁判で、烏賀陽弘道氏に100万円の支払いを命じた。(この訴訟はその後烏賀陽弘道氏が控訴して逆転勝訴しているが、以下は初出のままにしておく)

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一方、烏賀陽弘道氏がオリコンに対して「訴訟は表現の自由に対する萎縮的効果を目的とするもの」として1100万円の損害賠償などを求めた反訴については、「取材対象者のみを被告として訴えても不当提訴ではない」などとして烏賀陽弘道氏の訴えを退けた。

この事件の特徴は、『サイゾー』に烏賀陽弘道氏が談話を寄せた記事について、オリコンが『サイゾー』ではなく記事の談話者である烏賀陽弘道氏だけを訴えたこと。もうひとつは、5000万円という高額の賠償を求めていることである。

名誉毀損の賠償額高騰化はここ最近いわれていることであるが、高額になることによって、被告側は弁護士を頼むのにもより高い着手金を払わなければならない。つまり、烏賀陽弘道氏は判決以前に訴えられた時点で経済的なダメージを与えられるということだ。

報道では、オリコンの主張が全面的に認められたなどと報じた所もあるが、それはおかしいだろう。

「5000万円の損害賠償を求めて」「100万円の支払い」でしかないこと自体、「全面的」とはほど遠い判決であり、その著しい差額こそが烏賀陽弘道氏が言うところの「恫喝訴訟」を疑う点だったのではないのか。

マスコミはそうした点について懐疑も分析も行っていない。記事に対する名誉毀損という、自分たちにとっても重要な問題なのに……だ。

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個人的には、少なくともメディアとして発言できる力のあるオリコンが、何が何でも裁判で立ち向かわなければならないようなことだったのかという点で疑問が残る。

ところが、個人ブログなどを見ると、必ずしもそうした意見ばかりではなく、単純にこう述べる者もいる。

「言論は自由だが、言論には責任がつきまとう。だから訴えられても仕方がない」

言論に責任を求めることは当然だ。しかし、その前に言論の「責任」をダイレクトに司法に持ち込むことの是非を論じる、という発想がどうしてないのだろう。

学問と言論と訴訟の関係とは

「言論」ではないが、「学問」に訴訟が馴染むか、という問題を考えさせられたことがある。藤村新一氏による、考古学の捏造問題である。

このときは、学界もマスコミも遺跡の地元住民も全てが騙された。世論の中には怒りと事の重大さから、裁判で断罪すべきという声も上がったが、学者の国会議員にあたる日本学術会議会員の池内了氏は、そうした声にこう反論した。ジャパンスケプティクス(JapanSkeptics)の機関誌から引用する。

「私は倫理を議論する限りにおいては、法を介入させてはいけないという立場です。不正行為がどのような犯罪行為に結びついたかによって判断すべきです。(中略)公開して自由な討論の中で、何が正しいのかゆっくり詰め寄っていくのが学問であり、それが無いところで騙されたということだろうと思います。議論すべきなのはそのことであり、藤村さんがどうこうということではないと思います」(Journal of the JAPANSKEPTICS 1999 Vol.12より)

池内了氏の意見は、「言論」にもあてはまることではないだろうか。

つまり、言論の自由と名誉毀損の問題は、もちろんケースによって異なるが、訴訟という方法が妥当なのか、それ自体を「自由な討論の中で、何が正しいのかゆっくり詰め寄っていく」試みがあってもいいのではないかと思う。

さて、前置きが長くなったが、疑似科学問題はこれからだ。

池内了氏と同じく物理学者を名乗りながら、「何が正しいのかゆっくり詰め寄っていく」ことをしない大槻義彦氏は、最近、夕刊紙のキャンペーンで、週刊誌や月刊誌に「江原啓之の本を出版差し止めして、放送局にも放送をやめさせ反省の談話を出させる」と息巻いている。

言論弾圧して相手を謝らせる……。これでは脅迫や強要の類ではないか。

疑似科学批判にかかわる学者の言うべきことではないだろう。

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