ハイパーサーミア、治療の真相

   2015/01/31

shippei
ハイパーサーミアをご存知だろうか。局所温熱療法といわれる。温熱療法というと、びわの生葉に棒もぐさを使用する「びわ温灸法」や、温泉で血流を良くしてミネラルを取り込む「温泉療法」など、多くの人は民間療法を連想するかもしれない。しかし、がん治療に採り入れられている温熱療法といわれるものは、保険適用もされている治療法である。

ハイパーサーミアは、文字通り患部という局部を温めることでがん治療を行うものである。

それは高度先進医療に属すものでありながら健康保険が適用になる。

では患部を温めることがどうして治療になるのか。

人間の細胞は、42.5度C以上に加熱されると死滅する。

ただし、正常な組織は加熱されると血管が広がり、その部分に血液がたくさん流れ込むことで熱を体外に放出するので、体温が41度C以上に上がることはない。

少しぐらい熱い風呂に入ったり発熱したりしても大丈夫なのはそのためだ。

ところが、がん細胞が栄養源とする新生血管は拡張されないため熱の放出ができず、加熱するとそのまま熱が伝わり死んでしまう。

つまり、正常細胞に比べてがん細胞は熱に弱い。この特性を利用する治療なのである。

実際にドイツでは、丹毒に冒され高熱を発した患者のがんが消失したという報告がある。

アメリカでは、感染すると高熱を出す数種類の細菌をわざとがん患者に注射し、高熱によって手遅れのがんの治療を行ったという実績もある。

といっても、冒頭の民間療法のようなやり方では、体の深部にあるがん細胞に熱は届かない。

そこで、ハイパーサーミアは、上下及び左右から二枚の電極で身体を挟んで高周波(ラジオ波)を流す。

組織の双極子およびイオンが1秒間に約800万回もの急速な回転、移動動作を起こし、摩擦熱を発生させることで、腫瘍の局所を30?60分間42~43度以上に加温する。

それにより、がん細胞の熱による死滅を狙うと同時に、温熱による血流の活性化で体全体の免疫力も上昇させるのだ。

ハイパーサーミアは、他の治療との併用によって治療効果の向上が見込める。

たとえば、増殖分裂を準備している時期のがん細胞は放射線が効きにくいといわれるが、一方でその時期のがん細胞は熱に弱いので、ハイパーサーミアによる治療を組み合わせることで、放射線治療を補完できるわけだ。

化学療法(抗がん剤)との併用では、ハイパーサーミアの加熱によってがん細胞の細胞膜が変性し、抗がん剤ががん細胞の中に入りやすくなる。まさに相乗効果を狙えるのだ。

この治療の特徴は、副作用が少なく長期的にできるということである。

抗がん剤は副作用が強く、使い続けることで肝臓や腎臓、さらには心臓も疲弊する。

放射線治療についても、照射回数が定められるなど侵襲性は否定できない。

しかし、体を温めるだけのこの療法は、まれに水泡程度の火傷が起こるだけである。

温熱を行った際、がん細胞に一時的に熱耐性ができるため、1度行うと次の治療まで3日程度は日を空けなければならないが、それ以外の禁忌事項はない。

また、首より下であれば殆どの部位で加温可能なため、臓器癌ならあらゆる部位に適応がある。

現在、ハイパーサーミアは、がん治療第5の柱、ともいわれている。手術・化学・放射線といった従来の療法は三大療法といわれるが、それに続く四番目の治療が免疫療法であり、その次に位置づけられている。

三大療法の中に入っていないということは、すなわち、残念ながらまだ標準的治療とはいえないということだ。

中には、ハイパーサーミア単独でがん細胞の消失に成功したという報告もあるが、多くのケースは化学療法や放射線療法、外科手術などとの補助的な併用、または再発がん、癌性胸腹膜炎などの症状緩和を目的とした治療が中心である。

その理由は、患部に対する加熱が難しいこと、医療従事者の理解が十分でないため医療機関の普及自体が不十分であることなどから、症例が少ないことがある。このがんではこの部分をこう加熱すればここまで改善できる、という再現性が明確にならないと、治療のガイドラインは確立しない。

また、原理的な限界として、悪性リンパ腫や白血病などの血液疾患に対する報告が少ないこともある。

ただ、これらについても、前記のような抗がん剤を効果的に使う補助的治療としては有望であり、今後の研究が期待されている。

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