トモセラピー、効果と適応を調べる

   2015/02/07

トモセラピー
トモセラピーという新しい放射線治療が話題になっている。一言で述べると、患部にのみ放射線を照射するものである。がん治療は正常なところまでダメージを受けるのが共通している。そのため、トモセラピーが注目されているのだ。その効果や適応について、実際に病院に取材をしてみた。今日はその結果について書いてみよう。

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がん治療の「三大療法」が最近見直されつつある。

以前は「手術」ががん治療の絶対的な条件とされてきた。日本は世界でも類のない「手術大国」ともいわれている。しかし、最近では非観血治療の方向に医学は進歩しており、たとえ手術するにしてもより負担の少ない方法が求められている。その鍵を握るのが放射線治療を有効に行うことだ。

放射線は、皮膚を通って内部まで到達する。たくさんの量の放射線が照射された部位は細胞の中のDNAが破壊される。

一般的には正常な細胞のほうが、腫瘍細胞より破壊されにくい傾向にあることから、放射線を患部周りにあてることで腫瘍細胞のみを焼き壊してしまう治療として有効とされている。がん治療だけでなく良性腫瘍やケロイドにも使われる。

手術のように体にメスを入れず、化学療法(抗がん剤)のような全身への侵襲もない放射線治療。本来なら画期的な治療のはずだが、残念ながら課題点もある。

何より、最新の技術でなるべく腫瘍のみに放射線を集中させてはいるものの、患部以外の部位に照射されることは避けられないことがある。つまり、がん組織の破壊とともに周辺の正常組織も損傷を受けるということだ。たとえば、消化器系のがんなら、周辺組織にすい臓や肝臓などが密着していることがある。腹部に放射線照射を受ける場合には、吐き気、下痢、嘔吐などの副作用が起こり、放射する部分の皮膚に腫れやかゆみを生じることもある。

何とか患部だけを正確にピンポイントで照射できないものか。そうした要求に応えうるものとして注目されているのが、トモセラピーという放射線治療装置である。断層写真の「トモ(Tomo=tomogram)」と、治療の「セラピー(therapy)」を合わせた造語で、2003年にアメリカの医療機器メーカーが開発した。

放射線治療は、CT撮影による画像診断を行い、その上で放射線治療を行う。つまり、部位確認と放射線照射がそれぞれ別の過程にある。しかし、それでは照射の位置が病巣から外れる可能性がある。

トモセラピーは、巨大なドーナツ形の照射装置に乗った患者が、画像撮影と放射線治療を同時に受ける。CT画像からがんの位置を割り出し、コンピューター制御によってその時点で照射部位を決め照射する。つまり、別の過程で生じる可能性のある照射ポイントのズレを防ぐことができる。

また、これまでの放射線照射は、上下2つの方向からしか照射できなかったが、トモセラピーでは放射線は360度あらゆる方向から照射される。つまり、より正確に患部により集中的に放射線を照射できるということだ。

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こうした技術的な進歩が、放射線治療の奏功率を向上させると期待されている。たとえば、日本テレビが2007年8月22日に放送した「NEWS ZERO」という番組では、「この『トモセラピー』は、従来の『手術』と同じかそれ以上の効果をあげられる放射線装置だと期待されているんです」などと紹介された。

宇治武田病院放射線治療センター長・岡部春海氏は、同病院の公式サイトで、「(トモセラピーは)早期発見時の根治治療からターミナルケアにおける痛みを制御する治療まで、幅広く効果的な放射線治療を行えます」と、万能の治療方法であることを強調している。そして、「例えば白血病の場合は、体全体の骨のみに集中して照射することが可能です」と述べている。白血病は、強い抗がん剤治療を行うため、放射線による負荷の軽減が実現するならすばらしい。

トモセラピーの効果は?

しかし、トモセラピーは本当にそれほど画期的なのか。

実際に取材をしてみると、残念ながら現場の声はまだ慎重である。たとえば、トモセラピーによる治療を活発に行っている北斗病院放射線科では、その治療効果について、「開発されてまだ数年しか経過しておりませんので、確定的なことはまだ申し上げられない段階と思います」と言う。

「放射線の分布ですが、従来型よりは標的への集中度が高く、周囲の正常な臓器への線量を低下させることが出来る可能性があると思いますが、それが実際の治療効果と副作用の低減に繋がるかどうかはまだ確定していないと思います」(同)

前記の白血病治療としての骨「のみ」照射も、「放射線は骨に集中して照射することはある程度は出来ますが、当然、骨以外の臓器にも放射線が通過しますので、骨だけに放射線が当って、他の臓器に全く放射線が当らないという訳ではございません」と歯切れが悪い。

ということは、「ピンポイント」がセールスポイントであるはずのトモセラピー自体の特性が疑われてしまう。ちなみに血液内科のない同院は、実際の白血病患者への治療経験はないそうだ。

江戸川病院に至っては、「白血病の場合は骨だけに照射するのではなく、全身に照射するのが標準的なので、トモセラピーの特徴であるピンポイントでの治療は一般的ではない」と、適応自体に否定的である。

なあんだ。筆者はガッカリしてしまった。こういうことは、いい事尽くめの報道を額面通り受け止めずに、実際に現場に聞いてみないとわからないものである。

同治療装置は、現在、日本には7台しかない。つまり、7つの病院でしか症例がないということだ。データが質量ともに不足しているのは仕方のないことかもしれない。それでも、北斗病院では2005年9月の導入以来、194人のがん患者に治療。病巣部の改善には手応えは感じているという。

トモセラピーは保険適用される。地元の病院で導入されていれば、現在でも検討できる治療ではある。

付記

記事執筆の時点では、いささか期待はずれだったトモセラピーであるが、2014年には、元プロ野球選手の角盈男氏が、前立腺がんでトモセラピーを使ったと本人の口から公表されている。

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