福島県立大野病院事件(後)患者を責め立てる不毛な意見に物申す

   2015/02/07

福島県立大野病院事件
福島県立大野病院事件。3度目になるが書かせていただく。といっても、あまり思い出したくない過去なので、最初は書かないつもりだったが、Web掲示板で繰り広げられる「福島県立大野病院事件」の一部書き込みに我慢がならず、一言書かせていただくことにした。患者を責め立てる不毛な意見に物申すことにしたのだ。

筆者の妻もかつて癒着胎盤を経験し、亡くなった患者と似たような経過をたどったことがある。

その立場から言わせてもらえば、「妊婦のわがままが原因」という意見は読むに堪えない。

そう書き殴るアナタは、亡くなった患者の位牌の前で、同じことが言えるのか!

一般の妊婦が医学に無知なのは当たり前。

それを説明して適切に処理するのが医師側の仕事だ。

そんなことは医療行為に限らない当然の話だ。

そもそも、机上の空論やリアリテイのない「中立」論で、命まで失ったことに対して軽々しく「○○が悪い」などと書き殴ることは慎しむべきだ。

ワイドショーなどは、Web掲示板の議論が、医師無罪を呼びかける潮流になったと褒めちぎる。

しかし、一方で、医師側の問題点を追及する意見が埋没し、患者側への誹謗中傷が横行した弊害も見ておくべきである。

さて、筆者の妻は、かつて癒着胎盤で大量出血したが、手術では止血が成功し、結果的に子宮も摘出しなかった。

同じ癒着胎盤でありながら、亡くなった患者と明暗を分けたと思われる客観的な違いは、筆者の場合は東京の大学病院だったことと、医師の対応の違いにあると思った。

妻の担当医の考えは、最初から、もし癒着胎盤だったら、という数字的には僅かな「最悪のケース」を前提とした。

その時点で、ハイリスクなのだから、母体の生命の安全という観点からすべてにおいてより安全なやり方をとりましょうという方針になった。

だから、子宮摘出はもとより、開腹や麻酔など手術・治療法の選択について、慎重な対応をとり、妊婦側(妻)が病院の方針を覆して自分の希望を述べることはなかった。

いや、できなかったといっていい。

「母体の生命の安全」優先に異存があるはずがないから、医師側の「安全策」に従わざるを得なかったのだ。

しかし、結果論でなくそれでよかった。

なぜなら、医学的に素人の患者にとって、癒着胎盤の危険性を含んだ前置胎盤の本当の怖さなどわかるはずがないからだ。

医師には「最悪のケース」から手を打つ対応を考えてもらってよかったと思っている。

福島県立大野病院の場合は、亡くなった患者が「子宮温存」や「大野病院での手術」を希望したという。

だから、医師側は患者の希望に添う方向で処置して、それが対応の遅れにつながった。

これをもって、医師擁護の者たちは、「転院を勧めたのにしないで子宮を残すことまで要求した無知でわがままな患者が悪い」となる。

しかし、同じ体験をした筆者の妻に言わせれば、知らないことが悪いという責め方は理解できない。

誰だって、前置胎盤など自分がならなければわからないし、なったってピンと来ないだろう。

だったら、患者を責めるアナタは妊娠・出産のリスクを何でも知っているのか。

んなこたぁないだろう。

転院云々にしたって、事件の舞台が地方であるという現実を考えると、事情を知らない無責任な評論でしかない。

その無責任さは、亡くなった患者だけでなく担当医の葛藤をも冒涜するものだ。

事故報告書の内容が本当なら、癒着胎盤の頻度も少ない例としていたことや、患者の意向、さらに人手もない病院であることなどから、医師は癒着胎盤を前提とした対応で腹を決められなかったのだろうと思う。

癒着胎盤という最悪のケースに基づいた対応をもっと詰めていたら、また違った判断や展開があったのではないか、という思いは、筆者に限らず癒着胎盤でも無事に出産した人々が率直に感じていることだと思う。

もちろん、これは今回が刑事罰としてふさわしいかどうかという問題とは別次元の話である。

筆者は、こうした微妙な医事紛争に警察・検察を介入させたくないのなら、第三者の中立審議機関のような所を作るしかないと思う。

それとともに、国はもっと医師を増やして欲しい。

妊娠7週ぐらいまでに健診を受けないと分娩予約できないなどいう今の異常事態は、明らかに政治(医療行政)の失敗だと思う。

もちろん、医療費パンクのネガティブキャンペーンの一方で、無駄金としか思えないカネの使い方が少なくない歴代の政権政党に政治を任せたことは、有権者の責任でもある。

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