輸入農畜水産物の危険度

   2015/04/24

輸入農畜水産物

輸入農畜水産物が何かと話題である。偽装、毒餃子、BSE危険部位混入、残り物の使い回しなど、食べ物に関わるトラブルが絶え間なくマスコミを賑わせている。よくもまあいろいろあるわいという感じで、食の安全と信用に対する国民の不安と不満はつのるばかりだ。

2月24日には、輸入したミニマム・アクセス(MA)米を農林水産省が容器から出して点検する新制度を導入したところ、MA米からカビの発見が相次ぎ、約2カ月で57件に上っていることが分かったという。

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昨年、農水省が国内業者に売却したMA米からカビ毒が検出されたことから、安全対策として導入された新制度による発覚だった。

点検の効果が示される一方、「以前はカビ米を売っていたということか」「私たちの口にも入っていたかもしれない」「農水省が食の安全に対して、いかにいいかげんだったかが分かる」(農水省改革を検討する第三者委員会「有識者会議」の佐野真理子委員)との批判も出ているという(2月25日付「産経新聞」)。

輸入物であろうが国産であろうが、国内で流通する以上、これまでも検査はされてきた。しかし、それらは抜き取りサンプルの調査のため、決して完全というわけではない。

この新制度の契機となったリリースについて、昨年5月、私は以下のような記事を書いている。ご高覧いただければ幸甚である。

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23日、総務省は、「輸入農畜水産物の安全性の確保に関する行政評価・監視の結果に基づいて、厚生労働省及び農林水産省に対して所要の改善措置を講ずる」よう勧告した。

それによると、「農水省の全国30か所の動物検疫所のうち、22か所で畜産物の検査を輸入業者の用意した検体で行う」「25か所の動物検疫所と21か所の植物防疫所で、抽出した検体の数量記録がない」など、不適切な事例が多数あることが総務省の調査で判明したという。

また、厚労省では、輸入食品の残留農薬などを調べる「モニタリング検査」で、統計的に意味を持つよう同省が計画で定めた予定数を下回る数の検体しか調べていないケースが、全国28か所の検疫所のうち24か所を調査した結果、23か所で見つかったという。ナス科類は予定数の14%、水産物のレトルト食品は20%にとどまり、ある検疫所ではレトルト食品は一切調べていなかったそうだ。

輸入物だから絶対危険、というわけではない。ただ、国内ではあり得ない毒や疾病、国内では需要がないから規制されていないだけで、実は有毒な農薬や添加物などが入ってくる可能性がある。そうしたものを水際できちんとチェックするのは行政として当然のことだ。

ところが、食の安全につとめるべき両省は、そのために必要とされる公正で厳格な検査を行っていなかったというわけだ。これは許しがたい官僚と業者との癒着、および怠慢ではないか。

私は、この件で早速勧告を行った総務省に問いただした。今回の「不適切な事例」は、BSEや残留農薬など、私たちの食の安全を脅かすリスクを直接上げるものになっているのかどうかを確認したかったのだ。それに対して、同省行政評価局評価監視官(農林水産・環境担当室)はこう回答した。

「リスクの評価を行うには、そのための調査を行うことが必要であると考えます。今回の行政評価・監視は輸入農畜水産物の検査業務が法令等に則して適正に行われているかどうかといった観点からの調査・評価を行ったものでありますが、リスクの評価を行うための調査を行っていません。したがいまして、リスクについては、今回の調査結果から評価できるものではないと考えます。」

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BSEや残留農薬等はどうか。

「BSEについては、家畜の病気であるとともに人間にも害が及ぶことから、農林水産省、厚生労働省が協力して検査しているところ、BSE発生国からの牛肉の輸入は停止され、停止の解除に際しても、その国からの輸入牛肉については現物検査において検査の数量が特別に定められるなど、両省において特別な取り扱いがされています。

輸入食品に含まれる残留農薬については、厚生労働省が食品衛生の確保の観点から監視しており、モニタリング検査のほか、業者による自主検査の指導、業者への検査命令などの措置が厚生労働省において講じられています。」

お役人独特の硬い言い回しだが、結論として、両省に対する勧告前の状態が、リスクを上げているかどうかは「評価できない」、BSEや残留農薬についてはちゃんと監視・管理している、という話である。

ただ、BSEはともかく、残留農薬等については、その「モニタリング検査」や「業者による自主検査」なるものが、今回問題視され勧告されているわけだから、その点で得心できる回答とはいえなかった。

たとえば、私の乏しい知識で思い浮かんだのは、ナッツやカカオ、トウモロコシなど、一部の穀物に含まれるアフラトキシンというカビ毒だ。これは、「地上最強の天然発がん物質」といわれるほど強力なものであるが、一定の気温と湿度でしか発生しないため、国内農産物では検出されず、もっぱら輸入穀物や食品にのみ検出される。

アフラトキシン混入の可能性については、コーンスープなどの缶詰やチョコレートといった食品だけではない。チュアブルタイプの医薬品には、コート材料にトウモロコシデンプンを使用しているケースがある。チョコも食べればビダミン剤も舐める私は、不安が解決せず、引き続きアメリカ産トウモロコシを使っている製薬会社にも尋ねてみた。製薬会社側の回答はこうだ。

「平成17年12月にアメリカ産トウモロコシからアフラトキシンが検出されたことがありましたが、この時に厚生労働省より食品衛生法に基づき検査命令が出て、全船全ロットについての検査が義務づけられております。従いまして、通関時にはアフラトキシンが陰性のものでないと輸入許可が得られないようになっております」

ここでいう「全船全ロット」というのは、輸入したものを一粒残らず全部、という意味ではなく、いくつかに分けた梱包の全てにおいて、その一部を抜き取り調査するという意味である。それでも輸入物の検査としては、もっとも慎重なものになっている。しかし、そうした検査は毒物が検出されたから慌てて「全船全ロット」にするのではなく、もとから最大限の注意を払うべきではないだろうか。

2月に起きた「毒餃子」事件を考えて欲しい。不遜な態度から中国ばかりが叩かれているが、本来なら、輸入を行う以上、故意か不可抗力かにかかわらずリスクを想定して備えることは当然であり、それを行っていなかった輸入元であるジェイティフーズに対してもっと批判意識をもってもいいのではないだろうか。何しろ同社は、過去1年の間に天洋食品製造の商品について、異臭や異味など11件もの苦情に適切に対処していなかったのである。
このようなことを2度と起こさないためにも、総務省の勧告はより厳しい監視の下に行われるべきだ。業者も、行政指導があってから”仕方なく”対応するのではなく、某使い回し業者ではないが、その件で不祥事が発覚したら廃業するぐらいの覚悟をもってのぞんでほしいものである。

◆輸入農畜水産物の安全性の確保に関する行政評価・監視結果に基づく勧告について(総務省)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/080523_1.html

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