整体師の有罪判決で思い出した2つの医療事件(3)ー新免疫療法をめぐる裁判

   2015/04/25

新免疫療法
整体師の有罪判決つながりでもう少し書こう。冒頭の整体師にしろ、ハワード・ヤングにしろ、医師ではない。もっとも、医師ですらおかしな「治療」を行う者もいるから、医師なら大丈夫かといえばそうともいいきれないところが難しいところだ。

たとえば、八木田旭邦という医師は、『ガン細胞が消えた2ーさらに進化した新免疫療法』(二見書房)という本を2001年に出し、オリエント三鷹クリニックなる所で、「新免疫療法」を現在も行っている。

「療法」と名が付くが、健康食品をいくつか組み合わせて服用するだけで、普通の病院ではそのような治療は行われない。

つまり、医学的認知を得ているものではない。「新免疫療法」はこの治療をめぐって2件の事件の被告になった。

一件は、2期乳がんの女性患者が同クリニックの診察を受け、「手術は必要ない。新免疫療法で治る」と診断され、5年にわたって「新免疫療法」を続けたものの病状は悪化して死亡したことについて、「被告に騙されずにはじめから手術を行なっていたら、根治できる可能性が極めて高かった」として損害賠償を求めた事件。

もう一件は、再発大腸がんで末期に近い状態の女性患者が、多額の治療費用を支払ったものの、治療効果が虚偽ならその治療を受けることはなかった、という錯誤を理由として支払った治療費と慰謝料を求めた事件である。

八木田医師は、そのどちらも敗訴した。

東京地裁から、乳がんの女性患者遺族には約5000万円、大腸がんの女性患者遺族には200万円の損害賠償の支払いが命じられている。

それだけではない。

同クリニックでは、画像の判定なしに腫瘍マーカーのみで判定したり、腫瘍の大きさが「不変」でも「奏功」と判定したり、病院の治療を行っている患者についても「新免疫療法」による成果であるとしたりなど、明らかに水増しといえる「奏功率」を宣伝してきたため、癌治療学会からもクレームが付いた。

すると同クリニックのサイトには、「当院の判定基準は癌治療学会の効果判定基準とは異なり、腫瘍マーカーを用いた効果判定となっています」と赤字で表記。

虚偽宣伝でクレームが付いたので、今度ははじめから「奏功」について独自解釈に切り替えた。

病状は画像その他、総合的に判断すべきなのは医学の専門家でなくても知っている話だ。

医学のルールから堂々と外れたという意味で、見方によっては虚偽以上に悪質ともいえる。

奏功という点では、現在、通常の病院で行われている治療にかなうものはない。

もちろん、それは現在の医療が完璧であるということを意味するわけではない。

ただし、だからといって、それに置き換わるように採用する民間療法、代替療法は客観的に存在しないということだ。

「新免疫療法」のトラブルは、『健康情報・本当の話』(楽工社)に詳しい。

健康情報・本当の話

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  • 作者: 草野 直樹
  • 出版社/メーカー: 楽工社
  • 発売日: 2008/05
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