要するに妊婦にとってキンメダイは禁忌なのか?

   2015/04/25

キンメダイ

キンメダイの話です。厚生労働省が、2003年6月3日に「水銀を含有する魚介類の摂食に関する注意事項」を発表したのを覚えていますか。胎児に影響を及ぼすおそれがあるレベルのメチル水銀を含有している」ため、妊婦がそれらを食べるのは週2回以下が望ましい、という注意勧告です。

同省がこのリスクの対象としたのは胎児のみです。一般の成人はもちろん無問題。乳児は、「母親が通常の食生活をしていれば母乳中のメチル水銀は十分低濃度」であり、小児は「成人と同様にメチル水銀を排泄」するのでやはり問題ありません。

しかし、この勧告で一時期は一部の魚の取引値が暴落しました。キンメダイの水揚げが6?8割のシェアといわれる下田市漁協は、「量販店などの買いが鈍く、風評被害が大きい」(同月7日付「毎日」)と嘆きました。それはすなわち、勧告の対象ではない人の一部までが、魚を食べることをためらってしまう誤解を抱いてしまったわけです。

これに慌てた同省は、翌々日の5日に「水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項」を緊急リリース。対象を「妊娠している方、またはその可能性のある方」に限定していることを強調し、それ以外の人は安心して食べられると「風評」の「火消し」に躍起となりました。

もちろん、実際にキンメダイに対するリスク勧告が情報として有用なら構わないのですが、中西準子さんは、そもそも「1日摂食量」なる決め方に問題があったと指摘しています。

平成15年度注意事項では、表面的にはリスク評価で結論が出された。リスクは、(濃度×摂取量)で決まるが、厚生労働省が使ったのは、(濃度×1日摂食量)だった。1日摂食量とは何か? たまたま1日に食べる量(1日摂食量と彼らは呼ぶ)の平均値だった。1年間ならした平均値ではない。たまたま食べた1日の量の平均値である(「中西準子のホームページ」http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak311_315.html)

要するに、「たまたま食べた1日の量」を「1年間毎日その量を食べている」かのように計算し、その量の多さでリスクを「喚起」しているというのです。

やり玉に挙がったキンメダイは、魚の中でも食べる頻度はそう多いものではありません。にもかかわらず、食べた日の平均を「1日摂食量」として計算して、切り身一切れ分(76.8g)を1年間食べ続けていることにしています。その一方で、寿司や刺身で食べる機会がキンメダイの何倍も多いはずのマグロは、やはり食べた日の平均が2カン程度の「21.2g」と計算されているため、(年間の摂取量では明らかにマグロの方が多くても)キンメダイよりは危険ではない、ということになってしまうのです。

こんな比較では、現場の漁業関係者が怒るのは当然のことです。

同省は2年後の2005年8月12日、今度はその修正版とも言える「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項(案)」を発表しました。そこでは、「1日(平均)の摂取量」をそのまま年間の摂取量と見てしまうようなおそまつな比較はありませんでしたが、メチル水銀の濃度だけを発表したことで、たとえばバンドウイルカなど、あまり食べる機会がなくても濃度は高い魚の数字が高くなってしまう憾みを残しました。

つまり、合理性は一歩前進したものの現実的ではなかったということです。

ところで、妊婦は本当にキンメダイを「週2日」しか食べてはいけないのでしょうか。他の魚でもっと危険なものはないのでしょうか。

妊婦にとって食べ物の問題は重要です。この点、厚生労働省に最新の見解を質問してみたいと思います。回答が来たらまたこの場でご報告します。

食べ物と健康の問題は、『健康情報・本当の話』(楽工社)に詳しい。

健康情報・本当の話

健康情報・本当の話

  • 作者: 草野 直樹
  • 出版社/メーカー: 楽工社
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 単行本

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

この記事へのコメントはこちら

メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。
また、* が付いている欄は必須項目となりますので、必ずご記入をお願いします。

内容に問題なければ、下記の「コメント送信」ボタンを押してください。