葉酸のがんリスクと大豆イソフラボン騒動

   2015/05/01

葉酸と大豆イソフラボン

葉酸。大豆イソフラボン。いずれも、人間の体には必要な要素、もしくは健康食品としてお馴染みである。とくに、葉酸は妊婦に必要なものと厚生労働省でも16~49歳の妊娠可能な女性に日常から食べ物で摂取することを薦めているし、大豆イソフラボンは健康効果が報告されている。ところが、逆の報告もあるという話である。

妊婦には、「日経ヘルス」のニュースが気になるようだ。

葉酸をとるとがんリスクが高まるという報告である。

(11/26)葉酸強化は癌(がん)リスクを高める

葉酸(ビタミンB9)強化食品によって先天性欠損(birth defect)の多くを予防することができるが、同時に癌(がん)リスクを増大させる可能性もあることがノルウェーの研究で判明した。

1998年以降、新生児の神経管欠損症の発生率を減少させるため多くの国で食物の葉酸強化が義務付けられている。2009年10月の時点で、世界で生産される小麦粉の30%を葉酸強化小麦粉が占めており、さらに米国人の約40%が葉酸サプリメント(栄養補助食品)を利用している。

研究を率いたハウケランドHaukeland大学病院(ベルゲン)心疾患部門のMarta Ebbing博士は「葉酸強化食品やサプリメントの利用は、必ずしもこれまで考えられていたほど安全ではない。公衆衛生当局および食品安全当局はこのことを考慮する必要がある」と述べている。

Ebbing氏によると、ノルウェーでは食品の葉酸強化はされていないため、サプリメントによる癌リスクを検討する場として最適であるという。米国医師会誌「JAMA」11月18日号に掲載された今回の研究は、ノルウェー在住の虚血性心疾患(IHD)患者6,837人を対象としたビタミンBと心疾患の関係を調べる2つの臨床試験データを分析したもの。被験者は、葉酸+ビタミンB12+B6服用群、葉酸+ビタミンB12群、ビタミンB6単独群、プラセボ(偽薬)群の4群に無作為に割り付けられた。試験は1998から2005年まで実施され、その後2007年末まで追跡が続けられた。

その結果、葉酸服用群では癌発症リスク21%増大した。さらに、葉酸を服用した群で癌を発症した患者では341人中136人が死亡し、葉酸を服用しない群で癌を発症した患者に比べて死亡率が38%高かった。葉酸の服用と関連のあった癌で特に多かったのは大腸(結腸直腸)癌、肺癌、前立腺癌、血液癌であった。全体では葉酸とビタミンB12を服用した患者の16.1%が何らかの原因により死亡したのに対し、いずれも投与していない患者の死亡率は13.8%であった。

米ワシントン大学医学部(セントルイス)外科助教授のBettina F. Drake氏は、同誌付随論説でこの研究について「重要な短期データを示すものだが、この報告によって葉酸強化が人々の健康に及ぼす長期的な利益が打ち消されることはない」と述べている。今回の研究で患者が服用した葉酸の用量は、米国で多くの人が摂取する量よりもはるかに高く、強化食品を使用しても十分に安全な範囲内にとどまると同氏は指摘するとともに、癌予防の取り組みとしては、禁煙をはじめ食事、運動などが重要であることに変わりはないとしている。

原文
[2009年11月17日/HealthDay News]
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葉酸はビタミンB群に属する水溶性ビタミンである。妊娠時にはとくに必要とされ、葉酸の摂取は二分脊椎などの神経管閉鎖障害の発症リスクを低減するという。

そこで厚生労働省は2006年2月、「妊産婦のための食生活指針」という報告書を発表。妊娠し得る女性(16?49歳)は1日あたり240μgの葉酸摂取を、妊娠した場合にはそれに200μgを加えた質量(440μg)を推奨し、そのための具体的な副菜メニューを示している。

さて、今回の報告で、胎児のために葉酸を取ったのに、今度はそれでがんのリスク?という不安が生じるわけだが、健康に良いとされてきた大豆イソフラボンが、実は健康被害のリスクをもっていたという2006年の報告が話題になったことを思い出して欲しい。

大豆イソフラボンの化学構造は、女性ホルモンであるエストロゲンによく似ているところから、加齢による骨粗しょう症や更年期障害、乳がんや前立腺がん等の予防対策に有効ではないかとして、大豆イソフラボンを抽出したサプリメントも近年登場していた。

ところが、厚生労働省に調査を依頼された食品安全委員会では、2004年1月から大豆イソフラボンについて調査を重ね、2006年5月に「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方(以下「考え方」)」を、厚生労働大臣に通知。

閉経後の女性の場合、大豆イソフラボンの錠剤(150mg/日)を5年間服用したところ、子宮内膜増殖症の発症が有意に高くなる。動物実験では、過剰摂取は胎児や新生児に卵巣や精巣といった生殖器官で有害作用が報告された。

そこで、食品安全委員会では、大豆イソフラボン錠剤150mg/日はヒトにおける健康被害発現量、その半分の75mgを「臨床研究に基づく現時点におけるヒトの安全な上限摂取目安量」と定め、サプリメントや特定保健食品などで摂取する量は、1日当たり30mgまでが望ましいとした。

その量で単純計算すると、納豆2パック食べれば「75mg」を超えてしまうことから、「納豆を食べるとがんになる」とする説までネット上を賑わせた。

しかし、大豆イソフラボンのみを抽出し、より吸収もしやすくしたサプリメントの含有分と、他の栄養素とともに構成されている一般の食材のそれを同一視するのは現実的な見方ではない。

食材には、それぞれの栄養素の役割を引き立たせ合ったり抑制し合ったりする、微妙なバランスが成立していると見られ、また食べたものすべてを吸収するわけでもないからだ。

国民栄養調査では、平均的な日本人(15歳以上)の大豆イソフラボン摂取量は1日当たり18mgとされており、過剰に恐れて、直ちに納豆を含む大豆食品の摂取を控えることはむしろ望ましいことではない。

大豆イソフラボンの健康効果自体が否定されているわけでもないからだ。

同委員会は、大豆イソフラボンについては「未だ実際に多くの研究が行われている段階にあり、ヒトにおける大豆イソフラボンの有効性と安全性についての議論は確立していない」としている。

つまり、食べ物でならとくに神経質になって減らす必要はないが、サプリメントの大豆イソフラボンに過剰な期待をして不自然な量を摂取するのは、今の段階では慎重であった方がいいということだろう。

話は戻るが、今回の葉酸にも同じことが言えるのではないか。

葉酸の摂取量の上限は1日1000μg(厚生労働省「第六次日本人の栄養所要量」)となっている。サプリメントも、それ以内なら今の医学では問題視されない。

つまり、厚労省の言うとおり、葉酸は食事からの摂取を基本とすればいいのだ。

産婦人科医師の多くは、「食材からの葉酸摂取は勧めるが、サプリメントとしての葉酸は摂っても摂らなくてもよい」という立場をとっている。

葉酸は、付け焼き刃ではなく日常的に摂るものであることや、サプリメントの過剰な摂取は、葉酸以外の思わぬ不純物や、マルチビタミンなどに含まれるビタミンAの過剰摂取(胎児への問題が指摘されている)が有り得るからだ。

やはり、サプリメント選びよりは、食材やメニュー選びに時間と手間を使った方がよさそうである。

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