中国製・中国産の危険度をどう見るか

   2015/05/03

中国製・中国産

中国製・中国産が問題になっている。食べ物、おもちゃ、電化製品、食器その他生活用品など。何が問題かといえば、安全性である。日本では許可されていない残留農薬だの、重金属を発見だのと、いい話が聞こえない。文化や価値観を差し引いても、我が国の製品・商品管理に比べてずさんであるとのそしりは免れない。ただし、だからといって中国を避ければそれでいいというわけではないだろう。今回もスケプティクスに考えてみる。

今日、美濃焼のラーメン丼を買った。

柄は気に入らなかったが、「日本製」と明記されていたのが決め手だった。

中国製のラーメン丼から、大量の鉛が検出されたニュースが頭に残っているので、ついそんな選び方をしてしまう。

それ以外にも、食材・食品の中国産はこれまでいろいろトラブルが報じられている。

だから、「中国アレルギー」が、筆者にもないとはいえない。

もっとも、中国製を日本製と偽装されたら、購入の段階で「中国」を避けてもだめなわけだが……。

2008年2月、中国河北省・天洋食品で作られた冷凍餃子を食べた3家族計10人が、下痢や嘔吐などの中毒症状を訴えた。

冷凍餃子の中に、有機リン系薬物「メタミドホス」が混入していたのである。

幼児が一時意識不明の重体(後に回復)に陥るなど被害が深刻にもかかわらず、中国側の不誠実な対応もあって、消費者は中国産の食材・食品に対して疑念と憤りを抱かざるを得なかった。

もともと中国産には、国内産に比べて、農薬や食品添加物がきちんと管理されていないのではないか、輸入工程で(防腐剤など)国内産なら使わずに済むものを使っているのではないか、といったイメージがある。

では、このような事件が起きるということは、やはり「中国産は危険」であり、それに比べて「国内産は安全」なのだろうか。

輸入されたものの検査は大きく分けて破壊検査と非破壊検査がある。

食材・食品の化学物質検査は主に前者で行う。

加工調理品なら開封はもちろん検体を破砕するなどして検査機器にかけて分析する。

検査の段階で商品としての価値は失われるので一部の抜き取り調査しかできない。

非破壊検査というのは、検体を破壊せずX線や磁力線などを使って分析する。

主に金属や石などの発見に使われる。

餃子事件は、数ある製品のうちのピンポイントでの化学物質の混入という犯罪だったために、確率的に発見は難しかったのだ。

では輸入物は徹底して避け、国内産だけを食べるようにすれば問題ないのか。

それもまた現実的でない考え方だ。

中国産さえ排除すれば解決……ではない

まず、こんにちこれだけ食糧自給率を下げてしまった以上、中国産を含む輸入食品・食材は私たちが好むと好まざるとに関わらず、食卓や飲食店で完全に避けることは不可能である。

それに輸入ものが危険であるとして、それがそのまま売られるわけではない。

輸入野菜であろうが、国産野菜であろうが、国内で流通する以上、残留農薬基準はすべて同じである。

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たとえば、中国産は2007年度は年間94件の違反品が検挙されている一方で、国内産の違反品は400?500件はあるといわれている。

輸入食材は入ってきた段階(検疫)でチェックが入るから文字通り水際で食い止められるが、国内の場合には売り場に並んでからの調査のため、違反が出ても完全に流通を食い止め回収できるとは限らない。

チェックの厳しさにもよるが、運悪く違反食材を食べてしまう確率は国内産の方がむしろ高いといってもいいかもしれない。

もちろん、違反の程度はいろいろあるから検挙数だけで危険度は測れない。

日本と中国とでは入手できる農薬の種類が違う、効率的により安全な農薬を使うという知識に差があるなどという指摘もある。

前述のように、基準は国産・輸入同じであっても、抜き取り調査である限界はあると言わざるを得ない。

ただし、一昨年の餃子事件のような“不自然な混入”はたとえ国内生産であっても、悪意のある犯人による急性毒性物の混入が絶対にないとはいいきれないということだ。

つまり、中国産さえ排除すればこのような問題は絶対起きない、というわけではないのである。

ちょっとスケプティクスに考えてみよう。

騙される方が悪い、というのはおかしい

これは中国に非は全くないとか、中国産は無問題ということではない。

しばしば言われる、中国の安全性に対する考え方が日本のそれとは異なるという指摘はゆるがせにできない。

事件がおきても日本と協力して捜査しようとしない独善的な中国の態度にも困ったものである。

しかし、国内産であれ輸入ものであれ、今回のようなリスクを想定して備えることは当然であり、それを行っていなかったことこそが問題の本質ではないだろうか。

今回の輸入元であるジェイティフーズ(JTF)には、昨年4月から今年1月までの間に、天洋食品製造の商品について、異臭や異味などの苦情が実に11件も寄せられていた。

にもかかわらず、特定の農薬を対象とする検査など原因の厳密な特定を怠っていたのである。

食品衛生法第三条(食品等事業者がみずからの責任で安全性確保に努力すること)に反するこの怠慢こそが、今回の事件につながってしまったのである。

要は、生産・製造者のモラルと、輸入ものであるならいっそうのチェック体制が求められるということだ。

つまり、私たち生活の安全性は、消費者の「心がけ」がおおもとにあるわけではない。

ところが科学ライターの松永和紀氏は、農家がおかしな肥料を使うのは消費者が無農薬を求めるからだ、と消費者を責める書き方を著書(『食卓の安全学』)でしている。

筆者はそういう逆立ちした立場を取らない。

騙す側と騙される側の関係は、騙される側のモラルや価値観がどうであれ、やはりおおもとである騙す側に改善を求めるべきがモノの順序でありスジであり道理だろう。

消費者はやはり弱い立場なのだ。

騙される方が悪いという言い分は、物を盗まれる方が悪い、誘拐される方が悪い、殺される方が悪い、という犯罪者擁護論と結局は同じである。

営業や生産に関わる仕事に従事した経験がある者なら、矜持としてそういう言い訳はしない。

「科学ライター」なんぞを気取っていると、そんな原則を忘れてしまうのかもしれない。

疑似科学批判全般について同じことがいえる。

騙される奴が無知だから悪い

こんな言い方をする人間の疑似科学批判論など、スケプティクスとは縁もゆかりもない考え方。信用してはならない。

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