アスベストのリスクを明らかにする

   2015/05/04

アスベストのリスク
アスベスト(石綿)による健康被害が判明している兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場の元下請け従業員の妻が6年前、石綿が原因とみられる肺がんで死亡。支援団体は同日、クボタに対し、社員の家族に行っている家庭内暴露と同等の補償をするよう要求書を提出したという。

大阪地裁(小西義博裁判長)では一九日、大阪府南部・泉南地域の石綿紡織工場に勤務していた元従業員や遺族ら二九人が、石綿の粉じんを吸い込み石綿肺や肺がんなどになったのは国の規制が遅れたためとして、国に計九億四六〇〇万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

小西裁判長は国の不作為を認め、原告二六人について一人当たり六八七万五〇〇〇?四〇七〇万円、合計で約四億三五〇〇万円の賠償を命じた。

判決では、「国と企業の責任は共同不法行為に当たる」と指摘。監督権限に基づく二次的責任ではなく直接的な責任を認定したことにより、石綿被害で国の責任を認めた初めての判決としてワイドショーでも取り上げられた。

ただ、アスベストは既存の建築物などでまだ残っている。外国(主にアジア)からの輸入品にそれが発見されることもある。その点で国民には一抹の不安も残っており、そこにつけこむ悪徳業者も跋扈している現状がある。

具体的には水道水のことだ。

冒頭のニュースの「元下請け従業員」の場合、何の下請けだったかというと、コンクリートにアスベストを混ぜた水道管の原料を運ぶ仕事だったという。

アスベストは人間が吸い込むことで肺の奥に突き刺さり、肺繊維症(じん肺)、がんの一種である中皮腫、肺がんなどの原因になる。

アスベストによる肺がんの発見は1960年、中皮腫死亡は1973年に我が国でも報告が出ている(宮本憲一・川口清史・小幡範雄偏『アスベスト問題』岩波書店)。

そういう恐ろしいものを水道管に使ったことで、関連業者に被害が出た。それだけでなく、その水道管からの水道水を使う私たちだった他人事ではない、という話だ。

拙著、『健康情報・本当の話』(楽工社)にも書いたが、弱酸性の水道水によって、アルカリ性のアスベストを材料とする水道管(石綿セメント管)からアスベストが溶け出す懸念を指摘する者がいる。

事実としてその可能性があれば指摘することは必要だが、問題は、そこに非科学的(要するに疑似科学)でかつアンフェアな危機感を煽り、浄水器等の購入に落とし込む業者がいることだ。

同紙では、彼らの論法にふたつのからくりがあることを説明。「水道局が情報公開に対して誠実な態度を示すとともに、消費者も恐怖心を煽る宣伝文句に安易に乗らずに、慎重な態度をとって欲しい」と結んでいる。

ちなみに、同誌には書いていないが、水道水中に含まれるアスベストが蒸発などによって再飛散した場合は「吸い込む」ことになるが、その場合のリスクはどうだろうか。

例えば加湿器には、水をその温度の水蒸気に気化して加湿する「気化方式」、水を沸騰させてその蒸気を噴射する「蒸気方式」、微細な水滴を直接空気に噴霧する「水噴霧方式」などがあるが、いずれにしても水を大気中に噴射するため、水中に含まれるアスベストが大気中に飛散することになる。

筆者はある発表もので、他の方のアドバイスなどを頂きながら、水道管からアスベストが流れ出た、アスベスト入り水道水を使った加湿器を6畳間で一晩つけっぱなしにした場合、水道水からのアスベスト再飛散のリスクはどうなるか、という計算をしたことがある。

冒頭に書いたように、この業界にはパクリ屋がいるので、具体的な計算方法や数値は書かないが、結論として、世界保健機構 (WHO) が「健康へのリスクが著しく低い」(1986年)とし、アメリカもアスベスト対策法で定める大気中アスベスト敷地境界基準の10本/1リットル以下であろう、という結論になった。

アスベストのリスクについて詳しく知りたい人には、宮本憲一氏と中西準子氏の書籍をオススメしたい。

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