『効く健康法 効かない健康法』更に「やってはならない健康法」

 

『効く健康法 効かない健康法』
『効く健康法 効かない健康法』(岡田正彦著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)という、巷間の健康情報を、著者の考えで改めて○×のチェックを行った著書がある。著者は新潟大学名誉教授。スケプティクスの立場から健康法、健康情報を考えるために参考としたい書籍である。

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世の中に広まっている健康情報は、2通りある。

ひとつはそれ自体が新機軸の健康情報。

たとえば、1日2リットル水を飲んだほうが良い、というようなもの。

もうひとつは、対立するもののある健康情報。

一方では、少食・絶食の健康法があり、一方ではきちんと食べましょうという、南雲吉則医師と高須克弥医師の対立などがその代表である。

対立するもののない健康情報は、それを実践すべきかどうかで迷ってしまう。

対立するもののある健康情報は、すでに日常生活の営みに組み込まれているもので、どちらにシフトしていいか迷ってしまう。

まあいずれにしても、健康情報というのは、命と健康にかかわるものだから、忽せにはできない。

そこで、今回注目されているのは、『効く健康法 効かない健康法』(岡田正彦著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)である。

もっとも、この手の書籍は過去にも上梓されたことはある。

それでもまた出てくるのは、それだけ、次々新しい健康情報が喧伝されるからである。

いきなり結論めいたことを書くが、筆者の場合、「これをやったら健康になる」というのは基本的に考慮しない。もっとはっきり書くと信用しない。スケプティクス(懐疑的)な立場で見てしまう。

ただし、「これをやったら健康上問題があるからやらないほうがいい」というものは気をつけたいと思う。

したがって、タイトルにある「効く健康法」というのは考慮しないが、「効かない健康法」が何であるかは興味がある。

これだけある「効かない健康法」

『効く健康法 効かない健康法』については、著者の岡田正彦氏が、『東京スポーツ』(2015年9月25日付)にその内容の一部をまとめている。

これらの健康常識実は通用しません

それを読んだだけでも、同書の重要な指摘がある程度理解できる。

ということで、それをご紹介する。

まず、岡田正彦氏は、「休肝日は意味がない」と断じている。

休肝日という言葉は、私の大学の先輩教授が考案したものです。これをNHKの朝の番組で話したところ、あっという間に全国に広がりました。実はこの人はかなりの酒好きで、自分への戒めという意味も含めてこんなことを言ったのでしょう。
 しかし、これには全く医学的根拠はありません。そもそも、人間の内臓が休むということはあり得ません。日本人にはアルコールに含まれるアセトアルデヒドという毒素を分解する酵素を持っていない人が多いのは事実ですが、肝臓は常に様々な毒素を分解しています。適量なら毎日飲んでも問題はなく、休肝日を作って、あとは大量飲酒というのが最悪のパターンです。

要するに、「休肝日」は「効かない健康法」なのである。

次に、「水を飲んでも血液はサラサラにはならない」と述べている。

水を1日2㍑飲むと健康に良い、血液がサラサラになると言われています。しかし、実際には血液が一瞬薄まるだけで、サラ…サラになることはありません。むしろ飲み過ぎると、塩分濃度が下がり、さらにけいれんなどを起こす危険性があります。水は喉が渇いた時に飲む。これが正解です。

以前、やはり『東京スポーツ』で、大槻義彦氏が、1日6リットル水を飲み、ゴルフ場を歩きまわる「科学的」な健康法を実践しているので、自分は無問題であると語っていたことがあった。

大槻義彦氏は、「科学的」と称して、ずいぶんトンデモなことを喧伝してきたが、命と健康に関することは取り返しがつかないので、軽々しく語るのは本当にやめてもらいたい。

これはもう、「効かない健康法」というより、やってはならない「健康法」と言うべきである。

あとは、「ダイエットには食べる順番は関係ない」とも述べている。

野菜を先に食べると糖質の吸収を抑えダイエットできる、ということはない、というわけだ。

ただ、この方法で食事をすると食後の血糖値はあまり上がらないし、先に野菜をたくさん食べておなかいっぱいになり、炭水化物を抑えれば、体重を減らすことは可能であるという。

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そして、「体温が高くても免疫力は上がらない」と指摘もしている。

免疫力というのは非常に複雑で、「免疫力を数値化する方法」はないからである。

冷えが体に良くないのは確かですが、では体温を上げれば免疫力がアップするという医学的根拠はありません。ましてや、がんになりにくいというのは言い過ぎでしょう。

欧米人は日本人より1度ほど平均体温が高いが、平均寿命は日本人より短いことも挙げている。

もうひとつ、興味深いものとして、「ストレスが原因で短命になることはない」というのがある。

ストレスは万病のもと……世間的にこれは通説になっているが、ストレスが原因でがんになるという説も今では否定されていることや、ストレスのない人は認知症になるリスクが高まることも示している。

もちろん、解決できるストレスは解決した方がいいし、ストレスが原因で心筋梗塞や脳卒中になるリスクは高まるともいわれている。

要するに、「人間にはほどほどのストレスは必要だということ」だそうである。

「効く健康法」は大丈夫なのか?

同書は、既存の健康法に「○」、すなわち、「効く健康法」もあるとしている。

ここは少し、気になるところである。

たとえば、「卵は1日1個にとどめておくべき……○」と書かれている。

女優の森光子は、鶏卵を1日7~8個食べていたそうだが、それでも90過ぎまで生きている。

『卵を食べれば全部よくなる』(佐藤智春著、マガジンハウス)はすでにご紹介したことがあるが、20代の頃、体を壊して体重が39キロまで減ったものの、鶏卵を1日10個食べる生活を1年続けたら元に戻ったという体験談を披露。

『卵を食べれば全部よくなる』と1日3個の鶏卵摂取健康法

読者に対しても、1日3個の鶏卵摂取健康法を推奨している。

糖質制限派の渡辺信幸医師は、肉200g、卵3個、チーズ120gを、1日のうち、どんな形でも構わないので食べるMEC食という「健康法」も提唱している。

もちろん、それらが正しいといえるかどうかはわからないが、雌雄を決するには、それぞれ信用できる前向き調査でもやってもらわなければなるまい。

「ワインのポリフェノールはがん予防になる……○」というのも、はたして言い切って良いのか、というスケプティクスな感想を抱かざるをえない。

たとえば、赤ワインに多く含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールによってサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が活性化されるという説は否定されているはずである。

何より、ワインはアルコールであり、飲酒による弊害もあるはずだ。

筆者は、ポリフェノールの効果がどうであれ、飲酒を「効く健康法」として枚挙すべきではないと思う。

そう考えると、同書にも、まだ今後、否定すべき事柄が含まれている可能性がある。

健康法というのは、それだけデリケートなものである。

医学的に信頼の置ける健康情報となるには、5つのステップがあると、医学者の坪野吉孝氏は述べている。

健康情報フローチャート

「○○は健康に良い」という体験談だけの健康情報は、ステップ1の段階で「それ以上考慮しない」話でしかない。

根拠となる研究があっても、試験管や動物実験のものだけでは「話半分」にとどめておいたほうが良い。

学会発表されれば、少しはまとまった報告と言えるが、学会というのは、任意団体で結成できるので、「学会」と名乗れば直ちに信用できるわけではない。

つまり、「学会発表」だけでは、まだ「研究価値の価値は未確定」なのである。対照実験でなければ「重視しない」。

それが信用されるようになるには、学術雑誌に発表され、多くの研究者の意見や追試によって複数の研究で支持されていることが条件である。

巷間、出回っているダイエットや健康情報のほとんどは、ステップ1かステップ2、せいぜいお手盛りの学会で発表されたステップ3止まりである。

同書に書かれている「効かない健康法」については十分考慮するが、「効く健康法」とするものにしては、今後、さらなる研究でそれがひっくり返る場合もある、ということは認識しておいたほうが良いだろう。

効く健康法 効かない健康法

効く健康法 効かない健康法

  • 作者: 岡田 正彦
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2015/08/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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