免疫療法の虚実

 

免疫療法の虚実
免疫療法といわれるがん治療がある。人間は免疫によって外敵から身を守り、体内の病気も退治して健康を維持する。病気になるのは免疫力が弱っているからだ。さすれば、免疫力を高めることでがん治療も成果が出せる、という考え方のもとにあるのが、がんの免疫療法である。しかし、それは否定され、また実際に成果もほとんど出ていないのが現状である。ということで、今回もスケプティクス(懐疑者)の立場から免疫療法をみていく。

『日刊ゲンダイ』(2015年9月3日付)の新企画連載「今押さえておきたいがん治療」には、免疫療法について書かれている。

『日刊ゲンダイ』(2015年9月3日付)

免疫療法というと、いかにも病気にききそうな名称である。

しかし、記事では、「がんの取材をしていると、従来の免疫療法を疑問視する声をよく聞く。はたしてどうなのか」というスケプティクス(懐疑者)の立場から書きだされている。

記事によると、免疫療法というのは、異物を攻撃する免疫細胞(樹状細胞、マクロファージ、リンパ球など)の働きを利用した治療法。それらの機能を上げて、がん細胞を退治するという理屈である。

ただし、免疫療法は、自由診療(自費診療)として行われている。

まず、記事は、「ペプチドワクチン療法」を例にあげて説明している。

ペプチドという“がんの目印”をワクチンとして体内に投与。それによって、がん細胞を非常に目立つ状態にすると、免疫細胞の一種、キラーT細胞が、がんの目印を持つがん細胞を狙って強力に攻撃する。攻撃力が増
し、がん細胞の〝死滅率″が高まる……という考えという。

うーん、しかしこれって、どこかで聞いたことがある。

たとえば、局所温熱療法(ハイパーサーミア)や、最近流行のマイルド加温療法でお馴染みのヒートショックプロテインでは、高温にすることでそれが産生されるが、がん細胞にもそれができて、がん抗原を示すので、免疫機能がはたらきやすいというものである。

つまり、「先進医療」として、自由診療でバカ高いカネを払わなくても、そのような「免疫療法」はできるのではないのか。

記事は、「樹状細胞ワクチン療法」にも触れている。

樹状細胞は、直接がん細胞とたたかうのではなく、がんと戦うリンパ球に「この目印を狙って攻撃しなさい」と教える司令官である。

その樹状細胞の“がん細胞察知力”を高めることで、司令官のはたらきをスムーズにするという治療法である。

原理的な限界も指摘される

しかし、そうした免疫療法は、自由診療で高いお金を払って治療を受けても、正直なところ、成果はない

というより、そもそも保険診療になっていないので明らかなように、十分な科学的根拠(エビデンス)をもって証明されているわけではないのである。

そして何より、記事は免疫療法の決定的な限界に触れている。

 さらに最近は、免疫療法について、別の見方が出てきた。日本医科大学付属病院がん診療センター・久保田馨教授が言う。
「免疫療法は、免疫細胞の働きを高める研究ばかりが行われてきました。しかし、がん細胞は免疫細胞の働きを抑えられる、つまり〝ブレーキ″をかけられるものだけが増殖する。免疫細胞の働きにブレーキをかける力をがん細胞が持っている限り、免疫細胞の働きをいくら高めても、その都度ブレーキをかけられるので、がんを死滅させられない。従来の免疫寮法の考え方そのものが、間違えているという見方が出てきたのです」

これは忽せにできない話である。

記事によると、免疫機能にブレーキをかけることを「免疫チェックポイント」というが、そのひとつとして「PD-Ll」というタンパクが発見されている。

現在の医学は、その前提に立って、がん細胞のブレーキを外す研究、すなわち免疫チェックポイント阻害薬が、ニボルマブなど国内外で何種類か承認されているという。

絶対という治療法がないがん治療に対して、いろいろな取り組みを行うこと自体は否定出来ない。

しかし、原理的な限界が指摘され、かつ自由診療で多額の費用がかかるとなると、はたしていかがなものかという気にはなってくる。

健康情報・本当の話

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  • 作者: 草野 直樹
  • 出版社/メーカー: 楽工社
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 単行本

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