発達障害の「特性」を過大に評価することは当人を苦しめる……

 

発達障害の「特性」を過大に評価することは当人を苦しめる……
発達障害というと、ときには障害への偏見がないという立場を強調する意味で、もうひとつは善意の誤解から、“発達障害児は特別な能力をもっている”という見方がある。しかし、スケプティクス(懐疑的)の立場から見ると、それはいささか問題がある「美化」なのだ。

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最近、発達障害の少年(15)が、優れた味覚を生かしたコーヒー豆焙煎の店を開業したとのニュースが話題になった。

発達障害の15歳が開店、優れた味覚生かしコーヒー豆焙煎

発達障害の15歳が開店、優れた味覚生かしコーヒー豆焙煎
「上毛新聞ニュース」より

障がい者が、誇りを持って自分の人生を切り開くことは立派なことであり、それ自体、いささかの問題点も存在しない。

しかし、そのニュースをもとに、「やっぱり発達障害者は天才・秀才なのだ」、という幻想のような誤解がまたぞろ跋扈すると、多くの発達障害者やその親御さんは心配している。

発達障害というのは、何らかの原因によって脳に障害を発生し、成長していく過程で発達する言語や運動、社会性などに支障をきたすことをいう。

したがって、発達障害だから「天才・秀才」という根拠はどこにもないのだが、実際には、学歴やある種の職人仕事で、発達障害者が目立つ、といわれる。

たとえば、芸能人、野球選手、科学者などでは、発達障害を自らカミングアウトした者、もしくは振る舞いの事実からそうではなかろうかと思われている者などが、メディアで取り沙汰されることがある。

東京大学の学生の半分は、アスペルガー症候群だ、などという説もまことしやかに語られる。

もちろん、半分などという具体的な数字が明らかになった統計は存在しないが、発達障害者が、“試験アタマ”や“職人仕事”で結果を出すことは、まったく考えもつかない無根拠なこととも言えない。

発達障害児に見られる特性の1つは、物事へのこだわりである。

同じことをしないと気がすまない。

覚えるべきことはきちんと覚えていないと気が済まない。

この、反復性と潔癖性が、暗記やルーチンワークに磨きをかけ、好成績を残すことは十分にありえる。

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冒頭のコーヒー焙煎の少年も、絶対的な味覚を持つ天才であるかどうかは分からないが、少なくともそうした“こだわり”によって、コーヒーに対して“違いの分かる男”になったのではないか、という推理は十分に成り立つ。

ただ、問題は其先である。

それなら、そのこだわりで、発達障害児はみんな自分の生き方を見つければいいじゃないか、そうしないやつは努力が足りない、と思われると、発達障害児の保護者は困惑するのだ。

なぜなら、努力自体が天賦の才であり、発達障害児のすべてが、結果を出す方向でルーチンワークを繰り返す努力ができるわけではない。

そもそも発達障害というのは様々な障害の総称であり、たとえば会話も困難な重度知的障害者には、通用しない話なのである。

そこで、この記事である。

『日刊ゲンダイ』(2016年11月1日付)では、不始末を起こした高畑裕太を俎上に、親として療育しなかった高畑淳子を批判するとともに、でも発達障害だって特性を活かせば自分の生きる道がある、という記事を書いている。

『日刊ゲンダイ』(2016年11月1日付)
『日刊ゲンダイ』(2016年11月1日付)

発達障害の特性を長所に “適材適所”で輝く仕事の選び方
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/192932/3

記事中の、自分の生きる道を獲得した発達障害者として、黒柳徹子、栗原類、勝間和代が例にあげられている。

もちろん、それは素晴らしいことで、かつ望ましいことではあるのだが、はっきりいってその人たちは軽度だ。

まるで、栗原類が発達障害者の代表のような捉え方をメディアにされると、中度・重度の発達障害者は、はっきりいって困る。

彼らの「成功談」は、軽度ならそのような道もある、というだけの話で、発達障害者全員を救う話では断じてない。

それを誤解してほしくないのである。

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