『爪もみ』安保徹氏の遅れた訃報がアノ憶測を呼んでいるが……

 

『爪もみ』安保徹氏の遅れた訃報がアノ憶測を呼んでいるが……
『爪もみ』の抗がん健康法を覚えているだろうか。というより、今も「現役」の健康法かもしれない。スケプティクス(懐疑的)の立場から見れば、一言して置かなければならない健康法だが、推進者の安保徹氏が亡くなったことで、まるで抗がん剤業者と戦う勇士が抹殺されたかのような想像も一部ではあるようだ。

安保徹氏は、昨年12月に亡くなったという。

ところが、メディアでは訃報が出なかった。

そこで、製薬会社による抹殺説を疑うトンデモがいるらしい。

安保徹氏の訃報
Facebookより

まあ、何があるかわからないのが世の中だから、抹殺が絶対にないとは言わない。

しかし、抗がん剤を使わない方向に世論が傾くほど、安保徹氏の意見や存在が世間に浸透しているとも思えない。

だいいち、それをいうなら、例の「がんもどき」の放射線医の方が、よほど該当する存在だろう。

安保徹氏が、新潟の温泉病院の外科部長だった福田稔医師の経験と仮説に、自らの理論的根拠を加えた『気血免疫療法』、別名福田ー安保理論を発表したのは、もう20年近く前の話である。


Google検索画面より

どういう健康法かというと、福田稔医師が、ゴルフをしようとすると、盲腸の急患が出た。

ゴルフをするぐらいだから、天気は晴天である。

そこで、盲腸と天気に関係があると福田稔医師はにらんだという。

現代社会は、多忙とストレスから緊張し、私たちは自律神経のうち交感神経が優位になっている。

交感神経が優位になると、血液中の顆粒球の割合が増える。

顆粒球はウイルスなど外的に立ち向かう能力があるが、増えすぎるとがんや各種病気の亢進につながる。

一方、副交感神経が優位になると血液中はリンパ球が増える。

リンパ球は、体の内部の免疫力で、こちらを増やすことで、がんやパーキンソン病など「免疫の病」を抑えられる。

そこで、指先の末梢神経を刺激して、副交感神経を優位にし、リンパ球を増やして免疫で対抗できる病気を治そうという理屈の健康法である。

薬指をのぞく、4本の指の爪の生え際を押すことで末梢神経を刺激し、副交感神経を優位にするという。

なぜ、4本の指の爪の生え際を押すかというと、そこが東洋医学のツボだからである。

『爪もみ』は、電子鍼を使って行うことも出来る。

ハリボーイ

この方が、末梢神経に刺激を効率よく与えることができるという。

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末梢神経に刺激を効率よく与える

そして、日本自律神経免疫治療研究会という学会を立ち上げ、賛同した医師および歯科医師(口腔外科としての治療)が臨床結果を発表しあっていることになっている。

が、こんにちまで、権威ある医学雑誌に関連論文を投稿し、専門家の厳しいチェックをクリアしたという話は聞いたことがない。

論文がない、ということは文字通り論外である。

つまり、医学界では相手にされていないどころか、議論にもなっていない。

それが『爪もみ療法』もしくは『気血免疫療法』の実態である。


がん治療は簡単なものではない

もっとも、爪を揉むだけなら、とくに健康を害するような侵襲性や副作用はない。

たまに、健康情報誌に、個別の患者のリンパ球の数値を発表することがあるが、それが事実なら、たしかに長い時間かけて、リンパ球は増えているようである。

だが、問題は、安保徹氏が、がん治療に、それ「のみ」を使えと主張していることである。

つまり、手術、抗がん剤、放射線といった病院の標準治療は、侵襲性があるだけでなく、身体にストレスを与えて交感神経が優位になるからと否定している。

爪を揉むだけでがんが治るのなら苦労はないが、繰り返すが医学的に通用するそのような報告はない。

それによって、治療機会を逃す患者がいるかもしれない。

誰だって、メスで体を裂かれ、臓物を取られるよりは、電子鍼で済むといわれたらそちらに心が動いてしまうだろう。

もっとも、現実に『気血免疫療法』を実施している病院でも、心ある医師は、標準治療で治癒が見込める場合はそれを勧めている。

なのに、メディアでは、安保徹氏が、標準治療を否定して『爪もみ』を売り込んでいる。

実に罪深いことだった。

もっと罪深いのは、末期患者のモルヒネを否定したことだった。

「がんの痛みは治癒反応であり、痛み止めは交感神経を優位にする」からという持論だった。

そのたるめ、胆管がんで亡くなった毎日新聞の新山記者が、セカンドオピニオンで安保徹氏と話をする機会があり、モルヒネの使用を禁じられたことを、生前の最後のブログで綴っていた。

新山記者のことはネットでも問題になったので、以来、安保徹氏は、モルヒネは絶対ダメだと厳禁はしなくなったが、それでも否定的であることにかわりはなかった。

最期ぐらい、少しでも安らかにと思うのが人情であり、もとよりモルヒネは国際的にも認められている処置である。

なのに、そんなときまで「治癒反応だ」といって鎮痛剤を取り上げる意見は、いかがなものか。

名前はいちいち出さないが、現代の医学・医療に対して、それを否定する人が出ると、一部の人はよく考えもせずに熱中する。

しかし、病院の標準がん治療は、伊達や酔狂で行っているわけではない。

何を信じるかはその人の自由だが、その「新説」が学問的にどう評価されているのか、臨床データはどうなのか、具体的にどんな治療計画なのか、といったことをきちんと調べた方が後々後悔しないのではないだろうか。

健康情報・本当の話

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  • 作者: 草野 直樹
  • 出版社/メーカー: 楽工社
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 単行本

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