ピンピンコロリではない迷惑な晩年も人生、という考え方もある

 

ピンピンコロリではない迷惑な晩年も人生、という考え方もある
ピンピンコロリという言葉がもてはやされ、「無駄に長生き」という“流行思想”が現代は蔓延している。しかし、それは、“邪魔になった奴は要らない”という排除の論理にすぎないのではないか。今回もスケプティクス(懐疑的)に人生について考えてみた。

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終末期の患者らの人工透析の導入を見送ったり、中止したりした経験のある医療機関は、2014年以降で約半数に上るとする調査結果を、日本透析医学会理事で川島病院(徳島市)副院長の岡田一義医師がまとめたという話で巷間盛り上がっている。

終末期の人工透析、2014年以降に医療機関の半数が中止経験

筆者が昨今気になっているのは、「ピンピンコロリ」こそが“模範の人生”であり、ひとたび病気やケガで人の世話を受ける状態に対しては、「無駄に長生きするのはよくない」と、安楽死待望大合唱の風潮にあることだ。

しかし、そのデンでいけば、心肺停止した筆者の妻や、遷延性意識障害(植物人間)の診断を受けた筆者の長男は、無駄に生かしてはならない部類になる。

2人ののどには、今も切開の跡がある。

自力呼吸が困難であったり、できなかったりしたから、喉に穴を開けた。

もちろん、そのときは昏睡状態、もっとも深刻な深昏睡である。

とくに長男は、自力呼吸を回復しても遷延性意識障害だと言われていた。

しかし、往生際悪く頑張ったおかげで、妻も長男も、現在生還して介助なく日常を暮らしている。

ピンピンコロリ派は、これをどう見るか。

安楽死などと、軽々しく述べられるようなものではないことに気づいて欲しいから、筆者の家族の話をした。

もとより、人によって「生きること」についての事情も考え方も様々である。

それを尊重することこそが、現代社会があるべき姿だ。

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NHKの『クローズアップ現代+』では、冒頭の“延命中止”について特集しているが、延命は要らないと言っていた患者が、その立場になったら延命を希望した、というエピソードを放送している。

私は、そこに非常にリアリティを感じた。

といっても、延命を希望しないことが間違いだ、と言っているのではない。

なんでもない時、上辺の理屈で漠然と“ピンピンコロリがいい”などという意見など、実は切羽詰まったリアルな場面での判断に使えるようなものかどうか疑わしい、と筆者は失礼ながら思っている。

『プア充』の島田裕巳氏はずっと先を行っていた

『プア充』(早川書房)という書籍で、島田裕巳氏はこう書いている。

『人に迷惑をかけるな』というのは、豊かになって人が孤立し始めた現代の妄想。お互いに迷惑をかけ合ってこそ、人間関係が育まれる

筆者は最初、“何を抜かすか、このユートピア論の宗教学者め”などと憤慨した。

人に迷惑をかけるなんてとんでもない。

筆者も、超後期高齢者の親を持つ身である。

介護の大変さが身にしみて分かる。

だから、自分は、誰にも迷惑かけたくない。

つまり、今流行のピンピンコロリで死んだほうがマシだと思った。

しかし、今、ピンピンコロリに対する絶対的な支持はなくなった。

島田裕巳氏の言うことが、よくわかるようになってきたのだ。

筆者は、少しだけものがわかったのかもしれないが、島田裕巳氏はとっくの昔にわかっていたわけだ。

筆者は、自分が恥ずかしくなった。

どうわかったのか。

人間の人生、人に迷惑をかけない時期なんてあるのだろうか。

生涯さんざん迷惑をかけまくっているくせに、最期だけピンピンコロリだからどうだというのか。

それで、有終の美を飾ったとでも思っているのか。

それは、他者に迷惑を掛けたくないのではなく、自分がみっともない最期になりたくないだけではないのか。

要するに、それもエゴにすぎないのではないのか。

人間は、オギャーと生まれてから、親や周囲の人々のお世話になって大きくなる。

成人したら、職域や地域や家庭などから、周囲の人と助け合いつつ社会に貢献する。

そして晩年、また人にお世話になリながら人生を終える。

本来、人生というのは人の世話になるのが摂理なのである。

その人が、認知症や、重い持病で寝たきりだったら、介護する人はもちろん大変である。

しかし、それは社会政策として解決する問題である。

だいたい、ピンピンコロリという発想。一見きれいだが、実は、それは障がい者差別の温床である。

なんとなれば、障がい者は生涯「ピンピン」することはないからだ。

もちろん、ここで述べたいのは、人の摂理ではなく現実の生き方であるから、非ピンピンコロリが正解だと声高に叫ぶことではない。

ただ、ピンピンコロリこそ美しく正しい生き方、というのは、一面的な考え方である、ということを述べておきたかった。

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