TOKIOのラーメンに暴言ツイート炎上と被曝福島の現実

 

TOKIOのラーメンに暴言ツイート炎上
TOKIOが2016年3月20日、日本テレビ系のバラエティー番組『ザ!鉄腕!DASH!!』で、福島産最高級小麦「春よ恋」の麺でラーメンを作ったことについて、藤岡真氏の暴言ツイートが炎上した話題で持ちきりである。この問題にスケプティクス(懐疑的)に接近するとともに、放射線医からみた福島の被曝についてもまとめてみた。

福島の食材については、いまだに少なくない人が敬遠する。

それは個々の消費者としての自由である。

だから筆者も、「食べて応援する」ということは決して言わない。

ただし、福島の食材を社会的に危険なものとして認定したいなら、客観的な根拠を示すべきである。

原発再稼動や原子力行政などの「反対派」には、2つの潮流がある。

原発再稼動や原子力行政には2つの潮流がある

そのひとつは、科学的根拠から客観的に放射線汚染を判断しつつ、総合的に考えて再稼働はやめた方がいいという立場である。

要するに、為政者の都合に関係なく、科学な真実本位で回答を出す。

もうひとつは、科学に関係なく、というより本音は反科学の立場から、とにかく放射線は怖い怖いと煽る立場である。

後者には、食品添加物、電磁波、水道水、この世の中の叡智のありとあらゆるものについて科学的根拠もなく頭から危険煽りをしている人たちが混じっている。

グルメ漫画の「福島に行くと鼻血がでる」などは、後者の典型的なものだろう。

筆者も、原子力行政や、原発再稼動には批判的立場を取る「反対」派である。

しかし、反科学の本音から、原発の悪口を連ねる「脱原発」とやらとは一線を画したい。

なぜなら、その潮流は、「脱原発」のために福島をスケープゴートにしているからである。

福島が、“怖い放射能”でボロボロにされた、いかにひどいところであるかを描くことで、だから原発なんてやめようよというロジックである。

しかし、それは福島の実情を客観的に描いたものではない。

今回の炎上ツイートにも、その可能性がある。

ツイート自体は被曝云々以前のこと

『ザ!鉄腕!DASH!!』では、高知土佐清水の宗田鰹、能登の海塩、函館の真昆布、福島産最高級小麦「春よ恋」の麺などでTOKIOがラーメンを作った。

それに対して、聞いたこともないミステリー作家という藤岡真氏が、

「福島の小麦から作った麺なのかよ。人殺し。」
「TOKIO。気違いが福島で米を作っている。」

などとツイートした。

事故から5年目でこのツイート。

時間もたち、検査体制も確立したこの時期に、またそんなツイートしているのかという批判コメントがネットでは目立ったが、やはり一部では、“放射能絶対怖い”から、「でも(福島産を避けるのは)正論」などと頑固に言い張るコメントもあった。

繰り返すが、福島産を個人的に消費するかどうかはその人の自由である。

しかし、「正論」たらしめる根拠がなかったら、それは個人の主観の域を出ない。

そもそも、作家を名乗るいい年したオヤジが、「人殺し」「気違い」などとツイートするとは何事か。

そんなもの、内容以前にツイートとして論外だろう。

それに、どんな劇薬のつもりかしらないが、どのみちラーメン1杯である。

ラーメン1杯で死ぬのなら、食品衛生法は根本から改善が必要になってしまう。

つまり、被曝問題というより、藤岡真氏のモラルやネットリテラシーなど常識が問われるツイートだったのだろう。

「年間1ミリシーベルト」を絶対化することが正しいのか

もっとも、こうしたツイートで、被曝に対する大衆の知識や価値観が露呈することも確かである。

放射線医の中川恵一氏が、『日刊ゲンダイ』で連載している『Dr.中川のみんなで超えるがんの壁』において、3月12日、3月19日と2度にわたって「被曝」をとりあげているので、その内容もご紹介しつつ、基本的なことを確認しておこう。

中川恵一氏は、まず3月12日に「発がん避けるための避難生活がガン増やす皮肉」というタイトルで、「年間1ミリシーベルト」についての解説を行っている。

日本の自然被曝は、年間平均2.1ミリシーベルトといわれている。

そして、医療被曝は年間平均3.9ミリシーベルト。

ということは、原発事故がなくても、私たちは年間平均6ミリシーベルト被曝していることになる。

「年間1ミリシーベルト」というのは、それらは勘定に入れず、原発事故由来など「不要な被曝」の「追加線量限度」として、国際放射線防護委員会(こくさいほうしゃせんぼうごいいんかい、International Commission on Radiological Protection、ICRP)が定めた数字である。

つまり、「年間1ミリシーベルト」云々というのは、言い換えると全部で7ミリシーベルトの被曝に抑えましょう、という話である。

この点を誤解して、「年間1ミリシーベルト」ですべてを賄わなければならないような計算をしていた人が2011年頃は多かったのではないか。

北欧は自然被曝だけを見ても、たとえばフィンランドが8ミリシーベルト、スゥエーデンが7ミリシーベルト被爆する。

フィンランドは、日本の「不要な被曝」まで加えた量を自然被曝だけで超えてしまうのだ。

北欧が、そのためにがんが多いというデータは存在しない。

というと、「人種、民族が違うから」と疑うものがいるが、メルティング・ポットの現在、北欧に住む日本人、日系だって少なくない。

その人たちにガンが頻発するという報告はない。

中川恵一氏は連載で、プラス「1ミリシーベルト」を超えたからといってがんが増えるというわけではなく、それよりも、1ミリシーベルトが「呪縛」になり、避難生活のストレスや不養生のほうが問題であると指摘している。

長きに渡る避難生活のストレスで、タバコの本数が増えたり、不自由な生活で野菜不足になったりすることは、被曝量の換算で100ミリシーベルトに相当するという。

しかも、仮住まいだと、体についてのケアが出来ず、糖尿病などを悪化させてしまう可能性もある。

そちらのほうが、「年間1ミリシーベルト」よりもよほど深刻である、というのが、「発がん避けるための避難生活がガン増やす皮肉」の趣旨である。

もっとも、タバコや野菜不足は、避難生活でなくてもおかしてしまいがちな不摂生である。

原発事故で東京から逃げ出した人が随分いるが、そんなことよりも、己の不摂生を改めるほうが先だったのだ。

「1ミリ」を超えないように考慮

3月19日付は、今回のテーマに対してもっと端的である。

「福島の米と牛肉は日本一安全だ」というタイトルで寄稿している。

福島の「米」と「牛肉」の全数検査で、市場には流通していない。

食品に含まれる放射性物質の基準は、アメリカやEUの12分の1以下の厳しさと指摘もしている。

野菜・果物・牛乳も基準超えはなし。「山菜・きのこ」はあるが徐々に減っている。

一番心配な魚介類も、事故の年の秋には低下し、今はゼロと書かれている。

上記の藤岡真氏のツイート問題では、「わざわざ内部被曝を高めるかもしれない食物は取る必要が無い」という藤岡真氏の側に立った書き込みもあった。

これも、2011年頃誤解されていたが、たしかに自然被曝はあるかもしれないが、原発事故で内部被曝が加わった、だから危険だ、とする意見があった。

だが、原発事故がなくても、私たちは食べ物その他で、日々一定の内部被曝をしている。

そして、福島産ではない食材でも、放射性物質が含まれていないものは皆無なのである。

記事では、「厳しい検査の結果、全食品での基準値超えは14年度に113件、全体のわずか0.3%。12年度の1035件(同3.9%)から激減ています」と述べている。

基準値100ベクレルの検査は、「年間1ミリシーベルト」を守れるように決められたもので、セシウムで測定しているが、他の放射性物質が含まれても「1ミリ」を超えないように考慮されていて内部被曝はほぼゼロとも指摘している。

結論

ネットのブログを見回してみると、「全数検査で、市場には流通していない」という点について、計算が合わないと異議を述べるブログもある。

まあたしかに、私もBSE以来、危険部位など「闇の取引」があるのではないかとの疑いが、完全に払拭出来ない疑い深い人間である。

偽装や数字のゴマカシなど、明らかな虚偽が、ぜったいにないとはいえない。

しかし、論拠が出鱈目かもしれないから採用できないと言い出したら、不可知論の立場に陥ってしまい、なにも論じることができなくなる。

公の数字を用いた中川恵一氏は間違っていない。

2011年の原発事故直後に、大槻義彦氏は、東北中の野菜を持って来い、みんな食べてやると啖呵を切った。

これは、検査体制も整っていない中で、御用学者が行ったパフォーマンスの類でしかない。

今回の記事で、中川恵一氏も、「私は、おいしい福島米を喜んで食べています」と書いている。

こちらは、少なくとも大槻義彦氏よりも真面目で根拠のあるものだと思う。

もとより、「福島の食いもんは気持ち悪い」派は、たんなる主観であり、客観的な論拠で述べているわけではない。

「放射能ゼロリスク症候群」も結構だが、客観的根拠を示すべきことと、個人的な主観による選択とは分ける理性をもっていただきたいものである。

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