唐辛子ダイエット、脂肪燃焼の効果は本当にあるのか
唐辛子がダイエットにいい、といわれることがある。辛みが汗をかくから代謝にいい、だから唐辛子の辛み成分であるカプサイシンをサプリメントで摂ろう、という話はネットにごろごろしている。しかし、そこはスケプティクス(懐疑的)に考えてみたい。
唐辛子の辛味というのは、料理を引き立てる調味料である。それを健康食品として摂取して、そんなに効果があったら大変なことになるだろう。
唐辛子(七味唐辛子)は、江戸時代より我が国でも親しまれてきた調味料である。
漢方薬を元に作られたという由来からもわかるように、古くから人々の健康に役立ってきたことは確かだ。
しかし、昨今の唐辛子ダイエットは、どちらかというとエスニックブームから発生していると見られる。
国際化時代といわれるように、昨今の海外旅行ブームで外国の文化が次々我が国にやってくる。
「エスニックブーム」といわれる流行もそのひとつだ。
「エスニック」とは本来、「少数民族」「異教徒」「異国情緒」といった意味だが、私たちがイメージするのは、アジアや中南米といった国々の、とりわけ食文化の流行をイメージするのではないだろうか。
唐辛子を使った、辛い料理を含め様々な「エスニックメニュー」が家庭にも浸透。
また、グルメブームや健康ブームなどから、唐辛子やターメリックなどが健康にいいといわれることがある。
とくに最近注目されているのが、唐辛子をたっぷり使った料理を常時食べることで、減量を図ろうという「唐辛子ダイエット」である。
唐辛子ダイエット。いかにも辛く苦しみそうなダイエットだ。
かつて、ある女性タレントが辛い物好きで、「マイ唐辛子」を携帯していると報じられたこともあった。
以来、唐辛子によるダイエットは廃れることなく安定したブームが続き、最近は料理としてだけではなく、カプサイシンを抽出したトウガラシダイエットのサプリメントまで発売されており、若い女性を中心に人気がある。
しかし、問題は、本当に唐辛子にダイエット効果はあるのかというこだ。
唐辛子ダイエットは本当に効果があるのか
唐辛子ダイエットの主役はもちろん唐辛子である。
その唐辛子には、カプサイシンという辛味をもたらす成分が含まれている。
カプサイシンは、摂取すると痛覚神経を刺激して猛烈な辛味を感じさせる。
そして、体内に吸収されると脳の内臓感覚神経を刺激。
副腎のアドレナリンの分泌を活発にさせて、実際の体温が上昇しないのに発汗作用を促す。
この発汗メカニズムを利用し、カプサイシンによって体内のエネルギーや脂肪を消費するというのが「唐辛子ダイエット」の理屈である。
実際に、カプサイシンによってラット体内脂肪が減少したという実験結果もある。
しかし、医学や栄養学、保健学など食べ物と健康について研究している専門家は、この効果に対しておおむね否定的である。
なぜなら、唐辛子で熱に変わるカロリーはせいぜい60カロリー程度。
脂肪1キロを燃やすために必要な7000キロカロリーには遠く及ばないからである。
カプサイシンで痩せることは出来ない、ということである。
「カプサイシンによってラット体内脂肪が減少したという実験結果もある」と述べたが、ラットで成功したからといって、そのまま人間にあてはまるわけでもない。
あくまでも、ヒトを対象とした証明がなされなければ意味はない。
これは、唐辛子ダイエットに限らない話だが……。
しかも、辛いものを摂りすぎることによる弊害もある。
激辛料理を食べた直後に舌の検査をすると、味覚に対する反応が低下するという調査もあり、味蕾(味覚を受容する器官)細胞の再生スピードを鈍らせ、摂りすぎると味蕾を破壊するともいわれている。
要するに、刺激物の摂り過ぎは味覚の反応が鈍くなってしまうかもしれないということである。
何より、辛いものは食欲を増進させる働きがあるため、逆に食べ過ぎを招いてカロリーを過剰に摂ってしまうかもしれない。
結論。唐辛子は、香辛料として適量を使用すべきもの。
カロリーの消費をするのなら運動にはかなわないということである。
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